井口資仁 ~自分の軸は何だ~

粘り強い打撃と駿足でメジャーリーガーとして2度のワールドチャンピオンにも輝いた井口資仁。 
今回はこの打者について打撃理論を紹介する。

 |特徴と成績

    -体格・生年月日
        -身長/体重:178cm/91kg
        -生年月日:1974年12月4日
        -投打:右投右打 -ポジション:内野(主にセカンド)

    -特徴
        -二度の盗塁王を獲得するなど打撃だけでなく、駿足も兼ね備えた選手。

        -ダイエー(現ソフトバンク)時代は主に3番バッターとして、長打だけでなく繋ぎのバッティングや、盗塁でチャンスを広げるなど常勝軍団の打線をけん引した。

        -流し打ちでの長打が魅力であり、詰まっても流してヒットにできる技術も併せ持つ。

    -主なタイトル・記録
        -盗塁王(2001年、2003年)
        -ベストナイン(二塁手部門:2001年、2003年、2004年)
        -ゴールデングラブ賞(二塁手部門:2001年、2003年、2004年)

     -通算成績 (打撃)
年度 所属球団 試合 打席 打数 得点 安打 二塁打 三塁打 本塁打 塁打 打点 盗塁 盗塁刺 犠打 犠飛 四球 死球 三振 併殺打 打率 長打率 出塁率
1997 福岡ダイエー 76 252 217 31 44 6 3 8 80 23 3 3 2 1 24 8 67 4 .203 .369 .304
1998 福岡ダイエー 135 476 421 58 93 18 4 21 182 66 12 6 15 4 28 8 121 6 .221 .432 .280
1999 福岡ダイエー 116 424 370 38 83 15 1 14 142 47 14 7 4 3 38 9 113 13 .224 .384 .310
2000 福岡ダイエー 54 185 162 21 40 9 2 7 74 23 5 2 5 1 15 2 29 5 .247 .457 .317
2001 福岡ダイエー 140 636 552 104 144 26 1 30 262 97 44 9 9 2 61 12 117 14 .261 .475 .346
2002 福岡ダイエー 114 472 428 64 111 14 1 18 181 53 21 7 5 2 27 10 84 8 .259 .423 .317
2003 福岡ダイエー 135 617 515 112 175 37 1 27 295 109 42 6 1 6 81 14 81 10 .340 .573 .438
2004 福岡ダイエー 124 574 510 96 170 34 2 24 280 89 18 5 0 8 47 9 90 14 .333 .549 .394
2009 千葉ロッテ 123 530 448 71 126 24 3 19 213 65 4 4 0 1 68 13 101 11 .281 .475 .391
2010 千葉ロッテ 143 650 531 88 156 44 1 17 253 103 2 1 0 7 98 14 114 13 .294 .476 .412
2011 千葉ロッテ 140 597 509 52 135 23 3 9 191 73 1 1 0 7 72 9 96 11 .265 .375 .362
2012 千葉ロッテ 140 578 505 58 129 30 1 11 194 60 3 1 0 4 53 16 99 11 .255 .384 .343
2013 千葉ロッテ 135 566 485 68 144 31 2 23 248 83 4 3 0 4 67 10 81 13 .297 .511 .390
2014 千葉ロッテ 109 408 357 35 85 24 0 10 139 49 1 0 0 3 40 8 74 7 .238 .389 .326
2015 千葉ロッテ 87 250 227 21 56 17 1 6 93 28 1 0 0 0 21 2 65 4 .247 .410 .316
2016 千葉ロッテ 79 176 152 13 39 8 0 5 62 34 1 0 0 3 19 2 50 1 .257 .408 .341
2017 千葉ロッテ 65 144 123 9 30 7 0 2 43 15 0 0 0 2 19 0 27 4 .244 .350 .340
通 算 1915 7535 6512 939 1760 367 26 251 2932 1017 176 55 41 58 778 146 1409 149 .270 .450 .358
(「一般社団法人日本野球機構公式HP」より引用)


|打撃理論

    -タイミングを制すること。 当時の王監督から受けた言葉である。
     野球は投手が投げることで試合が始まる。このため、試合の主導権を握っている投手のタイミングにいかに打者が合わせるかが大切である。
    具体的には、自分のベストなスイング(素振りで日々練習している自分のスイング)を試合でも出せるよう、投手のタイミングを自分のタイミングに変えてスイングすることが大切である。


    井口選手いわく、「打撃の本質として、投手のタイミングをいかに奪うかが大切」と話している。また「いくら自分の手の動きや足の動きを意識しても、実際の試合では投手と戦うことになる。"投手に対して自分がどうすべきか”という、打者と投手の戦いの本質を意識しておく必要がある。」とも話している。

    -ミートポイントを後ろにすること。
      これが井口選手のもっとも基本的な打撃論の軸である。ミートポイントをできるだけキャッチャー寄りにすることで、ボールの見極めや変化球へ対応できる可能性が高まる。
      井口選手いわく「わずか数十cmのミートポイントの違いでも、これまで空振りしていたボールを詰まりながらヒットにできるようになった」とのこと。

    ※井口選手はミートポイントを後ろにすることで「見逃したと思ったらバットがスッと出てきてヒットを打っているようなスイング」が理想であると話している。このようなバッティングを実践していると言われている代表が落合博満や和田一浩である。

|独自の練習

    -自分の体を理解することから始める。
    井口選手いわく自分の長所を見極め、長所を伸ばす練習をすることが大切とのこと。
    (井口選手は、小学生のころから長打は流し打ちで出ることが多かった。自身は振り遅れていると考えていたため、引っ張ればもっと長打が増えると試行錯誤していた。
しかし当時のダイエースコアラーであった金森栄治氏と出会い、もともとミートポイントが他の選手よりも後ろにあり、流し打ちで長打が打てるのは井口選手の長所であると助言を受けた。
これにより、引っ張って長打を増やそうという自身の体に合わない改善をやめ、長所を伸ばすことに集中して取り組んだ。始めはなかなかボールが前に飛ばなかったが、それが自分のバッティングスタイルであると信じて何か月もその練習を繰り返し、メジャーリーグで活躍するほどの結果を残すことができた。

    -日々自分のフォームが自分の軸(井口選手の場合、ミートポイントが後ろであること)からずれが無いか確認すること。
    井口選手いわく「プロ野球選手で、毎日自分のフォームをチェックしていても微妙にずれてしまう。経験を積んだ野球選手は自分の軸とのずれを見極めるために、日々自分のフォームを確認して素振り、ティーバッティングを繰り返している」と話している。
※小笠原選手のように1球1球黙々と自分のスイングを確かめるようなティーバッティングもこのずれを確認・修正する作業と考えられる。

|スイング参考動画


|考察

    -井口選手の打撃理論の中で、自分の軸を見つけること、持つことが重要であると感じた。
    つまり"自分を見極めて、自分のできること、できないことをはっきり自覚し、自分ができることでどう戦うかを考える”ことである。

    このように自分の軸(井口選手の場合は引き付けて打つこと)を見つけることができれば、不調になってもその軸に戻るよう調整すればよい。正解はないが、軸があれば人の意見を取捨選択することもできるし、自分が迷っても目指すべき方向はぶれないため、非常に大切な考え方であると感じた。

    -軸の見つけ方は、自分で見つけることができれば楽だが、ほとんどは第三者から見つけてもらうことが多いだろう、自分と違う視点である他人の意見を素直に聞く心構えも大切だと感じた。

読んでいただき、ありがとうございました。

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