この記事のまとめ
・打率4割を最後に記録した打者テッド・ウィリアムズは、"パワーの貯めと開放"を上手く利用したスイングであった。
・このスイングは「ツイスト理論」と名付けられ、物理的にエネルギーを最大化する理論であり、野球に応用することができる。
【目次】
テッド・ウィリアムズとは
1932年~1960年までメジャーリーグで活躍し、打撃の神様とも呼ばれている。
その活躍はすさまじく、MLB史上最高の左翼手とも称されたほどであり、メジャーリーグで三冠王を2度獲得した。
通算出塁率.482はメジャー歴代1位。さらには1941年に打率.406を記録し、現時点でMLB最後の規定4割打者である。
ツイスト理論とは
彼の打撃理論はテッド・ウイリアムズの著書「The Science of Hitting(打撃の秘密)」に記載されている。
その中で彼が説明している打撃メカニズムに対して、「ツイスト理論」をあてはめながら説明しているアメリカの記事があったため、このツイスト理論に沿ってテッド・ウィリアムズの打撃を紐解いていきたい。
ツイスト理論は複雑な体の動きであるため、できるだけ簡単にそして実践的に解説していく。
|基本概念:パワーを貯めて解放する
これがツイスト理論の基本的な概念である。
例えば輪ゴムを割りばしに巻いてみてほしい。その際、ゴムの一方は固定したまま、もう一方を巻いていってほしい。
十分に巻いてから両手を放すとねじった側のゴムは元に戻ろうとするし、固定していた側のゴムもねじった方と反対に動いていくだろう。
このとき、巻かずに固定していた側にも自然にパワーが生まれているのである。簡単にいうとこのパワーを打撃にも応用するのがツイスト理論である。
記事では、単純な筋力は打撃においてさほど重要ではなく、今から説明するツイスト理論で生み出すパワーが打撃では最も重要と述べられている。
|腰をコックしてパワーを貯める
まず、下の図の通り腰をひねることでパワーを貯めている。
これは一般に「腰のコッキング」と呼ばれている。
具体的には、腰をひねりながら下半身は重量を捕手寄りにシフトし、バットを引くと同時に投手寄りの足をステップしてエネルギーを貯める。
ここで意識しておきたいのは、先ほどの輪ゴムの例で言うと、エネルギーを貯めるときに一方の端を固定しておく感覚である。
このため、投手寄りのステップをした際、つまりしっかりと下半身と上半身をねじった状態でトップを作ることが重要と述べている。
|パワーを開放し、エネルギーをバットに伝える
下の図は、実際にスイングをする際の体の動きです。この4つの図の右下の瞬間にボールを打つためのエネルギーが放出されている。
右上のように、トップを作った際に捕手寄りに貯めた力が、右下の瞬間に投手寄りに開放晴れている。
このエネルギーは、インパクト時にボールに転送され、打球速度を最大化することができる。
下のグラフは、2つの波を示している。一方は左から、もう一方は右からで、互いに移動して干渉し、より大きな波を生成している。
ツイスト理論は、2つの対向する波のように、下半身と上半身の動きの干渉がより大きなエネルギーを蓄えることも前提としており、この蓄えたエネルギーが解放されるときに放出されるのである。
これはばねの力と同じで、ツイスト理論では、投げたり叩いたりするためのエネルギーは、ばねを圧縮するなどの弾性エネルギーとして説明できる。
実際にテッド・ウィリアムズのスイングを見てもらえれば分かると思うが、最大限に蓄積されたパワーを開放することでフォロースルーでは思いっきりうでが体の後ろまで回っている。ツイスト理論を実践すると、意識せず自然にここまでバットが回ってくる。
|回転ではなくツイスト
これまで説明したツイストにおけるプロセスは「回転」と誤解されることがよくある。
しかし、回転とねじれは別のものであると記事は述べている。ねじれはエネルギーを蓄えるが、あくまで回転運動はエネルギーを生むだけでエネルギーの蓄えはないという。
まとめ
最後の4割打者テッド・ウイリアムズは、「ツイスト理論」によってパワーの蓄積・解放を打撃で体現し、自身のパワーを最大限活用することで鋭い打球を飛ばし、ヒットを量産していたと考えられる。
単純に筋力アップすれば長打が打てる、早い打球が打てるわけではないことが分かるだろう。
近年は野球に関するデータや、運動力学などの情報がより簡単に手に届くようになってきている。
本人の力を最大限に生かした打撃をするためには、このように科学的なアプローチで打撃を考えていくことも大切ではないだろうか。
読んでいただき、ありがとうございました。
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