【メジャーでは常識】データが示す打撃理論「フライボール革命」とは?



この記事のまとめ

・メジャーリーグにより2016年ごろから提唱され始めた「フライボール革命」

25~35度の確度で、時速95マイル(時速約135km)以上の打球を放てば5割以上の確率でヒットかホームランとなる。

・このデータが明らかになってから多くのメジャーリーガーが採用し、MLB全体の本塁打数が格段に増加した。

 

フライボール革命のはじまり

2015年にメジャーリーグ(MLB)の全球場で導入されたデータ分析システム「スタットキャスト」によって、これまでの打撃理論が180度変わることとなった。

※スタットキャスト:メジャーリーグに導入されているデータ解析ツールであり、ステレオカメラやレーダーを使用して選手やボールの動きを高速・高精度に分析するためのシステム



こればMLBだけでなく、現在のプロ野球にも広まり、ソフトバンクの柳田選手など多くの選手の打撃に影響を及ぼしている。

その理論とは

「フライボールを打つ」という理論である。

人々はこの理論とこれによる打撃理論の変化を総称して「フライボール革命」と呼んでいる。

ではそのフライボール革命とは何か、簡単に説明すると以下の通りである。

時速95マイル(時速153km)以上の出口速度(バットから放たれたボールの初速)と、25〜35度の確度でボールが飛べば57%の確率でヒットかホームランになる

という理論である。
理論というかMLBの全試合のデータからはじき出された事実である。

このようにボールに確度を付けて、一定以上の速度でボールを放つことが打者として最も大切ということが事実として明らかになったのである。


ヒット・ホームランが出やすい打球とは

それでは、実際にスタットキャストのデータを見ながらフライボール革命についてみていこう。

以下の図から発射角度とヒットの相関関係を見ることができる。

 ※発射角度、ヒット速度、ヒット確率は、BaseballSavantのStatcastの2016年のデータより出典
 ※プレーヤーのバッティング統計はbaseball-reference.comの2016年のデータより出典

縦軸が確度で、横軸が打球ののスピードである。

実際にデータを見てみると、高い発射角度で打たれたボールは ヒットする可能性が高くなっている。

2016年にStatcast(スタットキャスト※)によって直接追跡されたこれらの5,527本塁打のように、十分な速さと正しい確度で打つと本塁打が多く出ている。


具体的には以下の速度と確度が最も本塁打が出やすい"スイートスポット"といわれる。
角度:25度~35度
速度:時速95マイル以上の打球速度(時速約135km)

これらのスイートスポットで打つと実に全打球の57%でヒットとなっている。



2016年のレギュラーシーズンのStatcastデータを見てみる。
ヒットまたはアウトをもたらした113,680個のボールの角度と速度の組み合わせを見ると、明るい色の領域はアウトになっており、暗い領域はヒットする可能性が高いというデータが出ている。


下の図の線で囲った部分をみてほしい。



一番左の暗い色の部分は「ポテンヒット」と呼ばれる内野手の頭を超えたヒットになっている。
一番右の暗い色の部分は「本塁打」になっている。真ん中の部分はフェンスを超えず、外野フライになっている。

全体を見て分かるように、25~35度の確度で打てば、外野フライよりヒット又は本塁打となる確率の方が高いのである。


これらのデータで分かるように、近年のメージャーリーガーはボールをより高く打つためにスイングを改造している。
ワシントンナショナルズのスラッガーであるダニエルマーフィーの平均発射角度は、2015年の11.1度から2016年には16.6度に上昇した。

その結果、彼の打率は2015年の.281から2016年には.347に上昇した。また、2015年よりも11本塁打多く記録している。


マーフィーのチームメイトであるアンソニーレンドンも同様の変更を行い、平均発射角度は2015年の10.6度から2016年には16.8度に上昇し、長打率(総基地数を打席数で割ったもの)も 363から.450に上昇している。

MLB全体で見ても、平均発射角度(ボールが打たれた後に飛ぶ角度)は2015年の10.5度から2016年には11.5度に上昇している。この頃から、MLBの選手たちはボールを強く打つだけでなく、できるだけ空中に高く打つことを意識している。

これらのアプローチは2016年以降MLBでは「フライボール革命」と呼ばれ、2016年は顕著でシーズンを通した本塁打数が格段に増加している。
2019年には史上最多の本塁打数を記録している。



また、このようにボールを高く飛ばして外野に打つということについて、
2015年のアメリカンリーグMVPのトロントブルージェイズのジョシュ・ドナルドソンは持論も展開している。

「野球場と内野を見ると、そこにはたくさんの選手がいます」と言いつつ「しかし、外野を見るとプレイヤーが少なく、空いているスぺースが多い。だから、ボールを高く飛ばすと、それほど難しくなくてもヒットのチャンスがあります。」と内野にゴロを飛ばすよりも外野にフライを飛ばす方がヒットの確立が高くなると説明している。

これは、今までよく日本の指導者がいう「ボールを叩きつけて、ゴロを打て。ゴロを打てば何が起きるか分からないから」という理論の正反対であるため、大変興味深い。


まとめ

ヒットとホームランを打つには、一定の打球速度と確度を意識することが重要である。

2015年のStatcastの導入により、メージャーリーグは大きく変わった。
特にプレーヤーの動きやボールの軌道を詳細に測定できるMLBのカメラベースの分析システムにより、フライボール革命を加速させた。

今後もデータ分析が主流になることで、これまでの感覚、結果を重視した野球理論が覆されることがあるかもしれない。

メジャーと比べて日本はデータ分析はまだまだ発展途上であるため、今後もこのブログでメジャーで発見された理論があれば紹介していきたい。



読んでいただき、ありがとうございました。

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