落合博満(6)”壁”をつくるとは?

プロ野球史上1人しかなしえなかった3度の三冠王を獲得した落合博満。 
今回はパート(5)に引き続き、打撃理論を紹介する。

 |パート(1)~(5)の振り返り

    そのためには深いトップをつくること、ムダなく一直線に振り出すこと、大きなフォロースルーをとることが大切であると話した。

    そのためには投手の動きとボールの軌道を"景色”としてみること。そしてバッターボックスの足場を常に同じ状態に整えることが大切であると話した。

    そのためにはピッチャーの動きに対して始動を早めに取りゆとりを持つこと。そして意識は常に内角高めにおいておくことが大切であると話した。

    構えてからスイングするまで、体の中心線は前後せず常に固定しておくこと。

    自分のスイングができれば立ち位置はどこでもよい。ただ立ち位置を変えても自分のスイングは変えないよう意識する。


|打撃理論(6)「壁のつくりかた」

    -今回は落合博満氏の第六弾ということで、打撃指導ではあるあるとなっている”壁"について紐解いていきたい。

    -落合氏は"壁"についてどう語っているのか。いったい”壁”とはどういう意味か、そして本当に必要であるかについて落合氏の理論とともに迫っていこう。

    -壁はつくる必要もあるが、つくってはいけない場面もある


    バッティング指導の時によく言われる”壁”について落合氏の理論を紹介したいと思う。

早速だが、落合氏はよく日本の指導者が言っている"壁”の間違いを指摘している。

よく言う壁とは、投手寄りの肩、腰、ヒザを指し、これらが投手に向かって一切開くなという指導で使われる。

例えば、壁を作ったときの足は、つま先は上げたり開いたりせず、投手に対して垂直に位置しておくのである。

 <右下のステップしてスイングするまでの形を見て欲しい。しっかり足、腰、肩を投手の方に開かないよう壁を作って我慢している。>


しかし、落合氏は、ステップしてから、スイング、フォロースルーまでずっと壁を作るのは間違っていると説明する。

落合氏は「フォロースルーの段階は体の投手寄りの側面に壁を作ることを意識せず、体が開いても大きくバットを振りぬくことがより強く遠くへ打つための秘訣」と話している。

具体例を挙げると以下の選手の写真を見ていただきたい。


 <現役を代表する左打者と右打者をピックアップした。フォロースルーの写真だが投手寄りの足の位置を見ていただきたい。>


ご覧のとおりフォロースルーの段階でつま先は上がったり、開いたりしている

これらは、理にかなってると落合氏は話す。

よりボールに対して強いパワーをぶつけるためのスイングは、体の回転でパワーを蓄え、一気にバットの遠心力をボールにぶつけるという動きだが、フォーロースルーの段階まで体を開かなくしてしまうと体の回転は急激に抑制され、パワーが半減してしまう。

フォーロースルーでは壁を作ることを意識せず、より大きく降りぬくことが大切なのである。

その際につま先を上げようが、体を大きく開こうが、上手くパワーを逃がしてやればいいと落合氏は話す。


だが同時に落合氏は壁について、全面的に否定しているわけではない。

野球というものは実にさまざまなスピードのさまざまな変化のあるボールを打ち返さなければならない。

その時に壁が無ければ、なんでも振ってしまい、またバットとボールが当たった瞬間にMAXのパワーで押し込むことができないだろう。

そこで落合氏は「ボールの勢いをしっかりと吸収するために、体の投手寄りの側面に壁を作る意識は大切」と説明している。

 <落合氏のスイング画像。黄色の部分で壁を作ってからフォロースイングでは壁を無くしている。落合氏の壁は、足をやや投手方向に向けて作っている。>


また「そして、インパクトした後に両腕が一直線の状態になったら、あとはフォロースルーで回転運動のパワーを逃がしてやる。」とし、インパクトまでは壁を作り、インパクト後は壁を無くすことが大切を話している。


落合氏はこれまで、指導の定説のようにいわれていた"壁"について再定義してくれた。

これからは"正しい壁"を頭に入れてスイングすることで、体に負荷なく最大限のパワーを発揮したスイングを作り上げていくことができるだろう。

|スイング参考動画



それでは、続編となる落合博満(7)もお楽しみに。

読んでいただき、ありがとうございました。

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