落合博満(3)いい選球眼の身につけ方

プロ野球史上1人しかなしえなかった3度の三冠王を獲得した落合博満。 
今回はパート(2)に引き続き、打撃理論を紹介する。

 |パート(1)、(2)の振り返り

    そのためには深いトップをつくること、ムダなく一直線に振り出すこと、大きなフォロースルーをとることが大切であると話した。

    そのためには投手の動きとボールの軌道を"景色”としてみること。そしてバッターボックスの足場を常に同じ状態に整えることが大切であると話した。

|打撃理論(3)「ボールの見極め方」

    -今回は落合博満氏の第三弾である。
    突然だが、いい打者をイメージしてほしい。いい打者は揃って甘い球は見逃さない、ボール球はしっかり見極めるという要素を持っているのではないだろうか。

    -今回はボール球をしっかり見極めるために、どのような技術・考え方をもっていたか、落合氏の理論を3つのポイントで紹介しよう。

▶ 今回紹介するポイント
    | 始動を早くする
    | 内角高めに意識をおく
    | 自分の打ち方を変えない


    -”始動を早くする”ということ

    これまでパート(1)で紹介した”トップの位置を深くとり、ボールを見る時間をしっかり確保すること”と関係している考え方である。

トップの位置を深くとるとボールをゆっくり見ることができるが、実際に深くトップをつくるとその分振り遅れるのではないかと考える選手も多いだろう。

実際、ストレートが速い投手と対戦する際、どうしてもスイングを早くすべきだと考えてしまう選手が多い。
しかし、そうすると十分にトップを作ってふることができず、パワーのある打球が打てなくなる。
さらに早く振ることだけに意識をおくと足や腰など全体のバランスもくずれてしまう。

落合氏は「速いから急いでスイングしなければと考えた時点で打者の負けだ」と話す。

そこでトップを深くとり、なおかつ振り遅れないために落合氏は「始動を早くすれば解決できる」と話す。

つまり、急いでスイングするのではなく、始動を早くするのである。

具体的には構えてからトップを作り始めるタイミングを早めるというとである。

 <落合氏のバッティングフォーム。左上の2枚目から始動。この始動を早めにし、投手に対してゆとりをつくるのである。>


当時落合氏が監督をしていた際に、中村紀洋選手に始動を早めるようアドバイスしたことで
本塁打が増えただけでなく、2割7分台だった打率もその翌年2001年には3割2分、2002年には2割9分とアップした。

このように動き出しを早くすることによって、スイング自体は変えることなく、早くタイミングをとり、よりゆっくりボールが見えることに繋がる。


そして2つ目のポイントが、

    -常に内角高めに意識をおく

    打席で注意するコース、つまり打者がどこに目付をしてバットを構えておくかである。
落合氏はズバり「内角高めに照準を合わせている」と話す。
これは打者がもっとも打ちにくいコースだからである。

内角高めはインハイのボールは打者の上半身に一番近い場所である。それゆえ芯に当てるには腕をたたんでバットを振らなくてはいけない。
アウトコースであればトップからそのまま腕を伸ばして芯に当てることで流しながら打つことができる。

またインコースだとやや腰を引いたり、早めに体を開いてバットの抜け道を作るなど早く準備する必要がある。

ボールへの照準の合わせ方に対して、落合氏は時間をかけれないインコースから、時間に余裕のあるアウトコースの順にしておくべき」とも表現している。

これにより自然にインサイドアウトのスイングにも繋がると落合氏は説明している。

 <右打者による内角打ち(①)と外角打ち(②)のミートポイントイメージ。①>②の順で意識しておく。外角であれば多少遅いタイミングでも腕を伸ばしたまま当てることができる。>

このように時間的な準備をしっかりとるためにも、もっとも準備が必要となる内角高めに意識を置いておくことが大切である。

 
最後に3つ目のポイントは、

    -自分の打ち方はどんな相手を前にしても変えるべきではない


 練習では自分で何万回も素振りや打撃練習を繰り返していると思う。その練習は、投手に合わせて振っているというより自分が理想とするスイングを固めるため実施しているといってもよい。

落合氏はこのことから、「自分で得た技術や考え方はどんな相手でも変えれない、変えることはできない」と話している。
そのように理想のスイングを自分でつくり上げて得た要素は、どんな相手を目の前にしても変えない。

言い換えると、どんな相手でも打席で考えることは、これまで紹介したような基本的な打撃理論であり、それがを忠実に実行することが安定した結果に繋がるということである。
 <どんな相手でも打撃の基本は同じ。まさしく”オレ流”を持っておくことが大切だ。>


このように落合氏はボールの見極めについて、しっかり深いトップを作ったうえで、

始動を早くすることでボールをゆっくり見るようにし

常に内角高めに意識を置いて、自分のスイングをすることに徹していたのである。

この意識でバッターボックスに立つことで、どんな投手でも自分のペースで落ち着いて打席に立つことができるのである。


|スイング参考動画



それでは、続編となる落合博満(4)もお楽しみに。

読んでいただき、ありがとうございました。

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