落合博満(1) これが完成形!理想的な落合式スイングとは

プロ野球史上1人しかなしえなかった3度の三冠王を獲得した落合博満。 
今回はこの打者について打撃理論を紹介する。

 |特徴と成績

    -体格・生年月日
        -身長/体重:178cm/82kg
        -生年月日:1953年12月9日
        -投打:右投右打 -ポジション:内野(主にファースト)

    -特徴
        -卓越したバットコントロールと天才的なバットさばきで、数々のタイトルを総なめにし、歴代誰もなしえていない3度の三冠王を獲得したプロ野球史上最高の右打者と称される。

        -独特の練習法や、あまり練習が好きでないイメージもあるが、本人曰く王選手以外で私以上に現役時代にバットを振った選手はいない。と断言するほど練習の虫であった。

        -とことん練習し、野球を追求したことからその打撃理論は多くのプロ野球選手が参考にし、指導者としても”勝つ野球”を貫き、監督を務めた8年間で4度のリーグ優勝、すべての年でAクラス入りを果たした。

    -主なタイトル・記録
        -首位打者 (1981年 - 1983年、1985年、1986年)
        ※右打者のパ・リーグ記録
        -本塁打王(1982年、1985年、1986年、1990年、1991年)
        ※両リーグ本塁打王は史上初
        -打点王 (1982年、1985年、1986年、1989年、1990年)
        ※両リーグ打点王は史上初、現在も唯一
        -最高出塁率 (1982年、1985年 - 1988年、1990年、1991年)
         ※受賞7回は歴代2位、右打者歴代1位
        -最多安打(1982年)
        -最優秀選手(1982年、1985年)
        ※優勝チーム以外から2度以上の選出は王貞治(1964年、1974年)に続いて2人目
        -ベストナイン:10回(二塁手部門:1981年、1982年 一塁手部門:1983年、1988年、1990年、1991年 三塁手部門:1984年 - 1986年、1989年)

     -通算成績 (打撃)
年度 所属球団 試合 打席 打数 得点 安打 二塁打 三塁打 本塁打 塁打 打点 盗塁 盗塁刺 犠打 犠飛 四球 死球 三振 併殺打 打率 長打率 出塁率
1979 ロッテ 36 69 64 7 15 3 1 2 26 7 1 0 0 0 4 1 12 2 .234 .406 .290
1980 ロッテ 57 188 166 28 47 7 0 15 99 32 1 0 2 2 17 1 23 5 .283 .596 .353
1981 ロッテ 127 502 423 69 138 19 3 33 262 90 6 3 1 4 68 6 55 17 .326 .619 .427
1982 ロッテ 128 552 462 86 150 32 1 32 280 99 8 2 0 4 81 5 58 11 .325 .606 .431
1983 ロッテ 119 497 428 79 142 22 1 25 241 75 6 5 0 3 64 2 52 14 .332 .563 .421
1984 ロッテ 129 562 456 89 143 17 3 33 265 94 8 1 0 4 98 4 83 14 .314 .581 .439
1985 ロッテ 130 568 460 118 169 24 1 52 351 146 5 1 0 4 101 3 40 16 .367 .763 .481
1986 ロッテ 123 522 417 98 150 11 0 50 311 116 5 1 0 1 101 3 59 15 .360 .746 .487
1987 中 日 125 519 432 83 143 33 0 28 260 85 1 4 0 4 81 2 51 10 .331 .602 .435
1988 中 日 130 557 450 82 132 31 1 32 261 95 3 4 0 6 98 3 70 11 .293 .580 .418
1989 中 日 130 559 476 78 153 23 1 40 298 116 4 3 1 6 75 1 69 11 .321 .626 .410
1990 中 日 131 570 458 93 133 19 1 34 256 102 3 3 0 8 100 4 87 7 .290 .559 .416
1991 中 日 112 478 374 80 127 17 0 37 255 91 4 2 0 5 95 4 55 9 .340 .682 .473
1992 中 日 116 481 384 58 112 22 1 22 202 71 2 3 0 6 88 3 74 12 .292 .526 .422
1993 中 日 119 504 396 64 113 19 0 17 183 65 1 2 0 8 96 4 69 13 .285 .462 .423
1994 読 売 129 540 447 53 125 19 0 15 189 68 0 0 0 6 81 6 56 13 .280 .423 .393
1995 読 売 117 483 399 64 124 15 1 17 192 65 1 0 0 8 73 3 87 17 .311 .481 .414
1996 読 売 106 448 376 60 113 18 0 21 194 86 3 0 0 2 67 3 53 11 .301 .516 .408
1997 日本ハム 113 466 397 35 104 14 0 3 127 43 3 0 0 5 61 3 60 16 .262 .320 .361
1998 日本ハム 59 192 162 11 38 6 0 2 50 18 0 1 0 2 26 2 22 12 .235 .309 .344
通 算 2236 9257 7627 1335 2371 371 15 510 4302 1564 65 35 4 88 1475 63 1135 236 .311 .564 -
(「一般社団法人日本野球機構公式HP」より引用)


|打撃理論(1)「スイングと構えの基本」

    -落合博満氏の理論は1つの記事では書ききれないため、複数回に分けて掲載していきたい。
    
    -今回は記念すべき1回目として、基本的な「スイングのイメージ」と「構え」についてみていきたい。

    -スイングは"大きく速く”が基本

    落合氏は「簡単に言えば、"スイングは大きく速く"が理想であると考えている。長距離打者であろうがコツコツと打っていくアベレージヒッターだろうが、すべてに共通するのは"大きく速く"である」と話す。


落合氏の基本的な打撃理論である”大きく速く”を分解すると以下の通りになる。


 ”大きく速く = 深いトップ + 一直線に振り出す + 大きなフォロースルー”


具体的にそれぞれのポイントを見ていこう。

 ①落合式理想のトップの作り方

  ・もっともパワーが出るような深いトップの位置をつくる
   具体的には投手側の腕(右打者の場合、左腕)は捕手よりにめいっぱい伸ばす

   そして捕手側の腕(右打者の場合、右腕)は肘を内側の方向へ向けてたたんでおく。(つまり右脇は開かない)

   こうすることで、弓のように最も遠くの位置にバットを引きながら(左腕)、インパクトの時にパワーを最大化するよう腰と腕(右腕)を使うことができる。
 <バットを捕手よりにめいっぱい引く。このとき手は右肩の裏に入らないように>
    
  ・バスターで理想のトップの位置を確認してみる
   バントの構えをしてミートポイントを確認してから、スーッとバットを引いてボールを見る。こうすることでミートポイントから一直線にトップの位置までバットをもってくることができる。

つまり、スイングの時と逆の動きになるので、そこで自分の理想のトップの位置を探ることができる。

 この時の注意だが、トップの位置までバットを戻してきたときにバットを立ててスイングし始めるなど、余分な動きをしないことである。また、あくまで逆のスイングをしているため足もスイングしているときのように親指の付け根に力を入れて立っておかなくてはいけない。

 ②落合式理想のスイング

  ・バットを一直線に振り出す
   トップの位置から、腰のひねりを戻す力を利用して、一直線にミートポイントまでバットを出す
   そして、体と肘でボールを押し返す。
   ※落合氏の考えるミートポイントの位置については別記事で記載

 ③落合式理想のフォロースルー

  ・大きなフォロースルー
   ミートポイントでボールを捉えたら、あとは「バットをほどく感覚」でフォロースルーをするとのことである。

   バットをほどくとは、ミート時にたたんだ捕手側の腕(右打者の場合、右腕)を伸ばす際に、”肘を抜く”ようにするということである。

   具体的には、ミートしてから体の前でバットで大きな円を描きながら振りぬくようにする。トップからミートポイントまではまっすぐバットを出し、ミートポイントからフォロースルーは大きく振る。
 <フォロースルーは大きく。あくまでもフォロースルーはレベルスイングで自然にバットを抜くイメージ>


    -構えの位置は人それぞれ


まずは、以下の一流選手と言われる方々の構えを見ていただこう。
 <中村紀洋選手。バットを前に寝かせて構える>

 <タフィー・ローズ選手。バットを後ろに寝かせて構える>


ご覧の通り、人それぞれ特徴的な構えをしている。
以上は極端な構えであるが、どの選手も結果を出している。落合氏に言わせると構えは、「自分自身が違和感なく、いいフィーリングでトップの位置にもっていけるような形であれば良い」と話している。
つまり理想のトップを作ることができれば、なんでも良いということである。

自分に合った構えを見つけるための要素も落合氏は解説している。
具体的には以下のポイントである。

 ・深いトップをつくるまでの時間を確保しやすい構え
  生身の投手を相手にした際に、どんなタイミングでも自分がトップの位置を作りやすい構えにする必要がある。

  落合氏は理想の構えについて「打者にとって重要なのは、やはり自分のスイングができる時間を十分に確保することである」と話している。

  バッティングマシンなどでの打撃練習はボールが一定のタイミングでくるため、理想のスイングで打撃をすることは難しくない。

  しかし、試合などの生身の投手を相手にする場合、タイミングは1球1球変わるため、変化に対応できる時間をつくれるような構え探し出すことが大切である。


      落合氏はバッティングの飛距離は体の大きさは関係ないという。
体が小さくても”大きく速く”スイングすることで大打者になれると話す。

      「どんなに体格が小さな打者でも、強く鋭い打球、飛距離の出る打球を打ち返すことができる」と話す。

      実際、世界のホームラン王と言われた王貞治選手は身長177cm、プロ野球歴代3位の567本塁打を放った門田博光選手は170cmである。

       最近ではパワフルな打撃でホームランを量産する森友哉選手(170cm)、吉田正尚(173cm)も有名である。

|スイング参考動画



それでは、続編となる落合博満(2)もお楽しみに。

読んでいただき、ありがとうございました。

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