【野球×経済学】カウント別のベストな配球とは?ゲーム理論を野球に応用してみた


この記事のまとめ

・経済学では一般的な理論である「ゲーム理論」を野球に応用してみた。

・カウント3-0の場合、バッターは見逃すことが最も効果が高く

・カウント3-2でピッチャーは変化球を投げることが理論上最も効果が高いとゲーム理論では導き出された。


 

はじめに(野球において悩むカウント)

 
今回は野球において誰もが悩むであろう

「カウント3-0、3-2でとるべき打撃、配球は?」

という疑問について、経済学で使用されている「ゲーム理論」を用いて最も”合理的な選択”を明らかにしたいと思います!

「ゲーム理論」とは

解を紹介する前に、まずゲーム理論について簡単に説明します。





ゲーム理論とは

意思決定の問題や、行動の相互依存的状況を数学的なモデルを用いて分析する理論です。


もう少し分かりやすく説明すると、

「相手がいる状況で、自分がどのような行動をすれば最も有利になるかを考える理論」です。

ここでは、「様々な状況を分析し、最適な行動を考える理論の一つ」と覚えておいてください!


囚人のジレンマ”と言われるゲーム理論を分かりやすく説明した例もあるので、興味のある方はググってみてください。



この理論は現在、他社の行動と自分の行動でさまざまなパターンが考えられる中、自分の利得をいかに高めるかを考えないといけない状況、いわゆる「戦略的状況」を対象としてさまざまな分野に応用されています。

最近ではこういった「戦略的状況」の対象として、ゲーム理論は経済学だけでなく経営学、政治学、法学、社会学、人類学、心理学、生物学、工学、コンピュータ科学などのさまざまな学問分野にも見られるため、ゲーム理論はこれらにも応用されているそうです。


※今回は、ゲーム理論を使って、数学的に最も合理的な選択はどれかという観点で分析しています。分析結果はあくまで参考値として頭に入れたうえで、実際の試合の流れや打者・投手の相性も考慮してプレーしていくことが大切です!

カウント3-0でバッターは見逃せ

それでは、様々な分野で応用されている「ゲーム理論」を野球にも適用してみましょう。

まず、カウント3-0の場面で、ピッチャーとバッターはそれぞれどうすべきか?

ゲーム理論でもっとも合理的な選択を分析していきます。


|ピッチャーの選択肢

3-0において、ピッチャーには主に2つの選択肢があるとする。
※ここでの前提として、フォアボールは極力出さず、現在のバッターと勝負する場面とする

【選択肢1】:バッターが1球見逃す可能性があるため、ど真ん中に投げる。
【選択肢2】:バッターが打つ可能性があるため、打ってもヒットになりにくいようなコーナーギリギリにストライクを投げる。

|バッターの選択肢

バッターにも主に2つの選択肢があるとします。

【選択肢1】:変化球などでストライクからボールになる投げる可能性があるので、1球見逃すよう意識する
【選択肢2】:打てると思ったボールはスイングするように意識する

|ゲーム理論による分析

先ほどのピッチャー、バッターの選択肢をゲーム理論に従ってまとたのが以下のマトリクスです。

ゲーム理論に従ってそれぞれのパターンの”効果”と”リスク”を数値で示しています。

数値が大きいほどその効果やリスクは高いことを示しています。

※マトリクスおよび分析結果は米国の「Baseball Data Science」という組織のデータサイエンティストMicah Melling氏による研究結果から出典しています。

・左上のマス
まずピッチャーがど真ん中のボールに投げて、バッターがスイングすることを選択した場合、バッターはど真ん中のボールを打つため、5の効果があります。(つまり、ヒットの可能性が高くなります)
反対にピッチャーはヒットを打たれる可能性が高いため、-5のリスクになります。

・右上のマス
バッターがコーナーギリギリのボールをスイングする場合、一般的にヒットが打ちにくいため、スイングしても凡打又は空振りする可能性がありバッターは-1のリスクがあります。
ピッチャーはストライク又はアウトにできるので1の効果があります。

・左下のマス
バッターがど真ん中のボールにスイングしない場合、ヒットを打つ機会を逃したので-2のリスクを受けます。
同様に、ピッチャーは労力をかけず簡単にストライクカウントを獲得できるため2の効果を得ます。

・右下のマス
バッターがコーナーギリギリの投球でスイングしない場合、3ボール1ストライクのカウントで次の勝負に移るため効果もリスクも0となります。

|ゲーム理論での答え

ではこれらの条件をもとに、ゲーム理論からはじき出された最も合理的な行動を見てみましょう。

これはゲーム理論の分析法の1つである「混合戦略のナッシュ均衡」という方法で分析できます。
混合戦略のナッシュ均衡の詳しい説明はここでは割愛しますが、
簡単にいうと「完全にどれかの選択肢に決めきれないため、○○%でこの選択肢を選ぶことが最も合理的である」という形で解を導き出す分析方法です。

それでは「混合戦略のナッシュ均衡」を使用し、カウント3-0での合理的な行動はいったいどのようなものになるか見てみましょう。





カウント3-0における解

・バッターは14%の確率でスイングし、86%の確率で見逃す必要がある

(MLBのバッターは通常、3-0カウントで約6.5%の確率でスイングしている)

・ピッチャーは13%の確率ど真ん中を投げ、87%の確率でコーナーに投げる必要がある

だと分析されています。


つまりバッターは見逃す選択が数学的に合理的に効果が高くなりやすく、

ピッチャーはコーナーギリギリに投げる選択が数学的に効果が高くなりやすいということです。

よく、3-0では”見逃せ”とバッターにサインを送る攻撃側の監督は、あながち間違った選択ではないようですね。


カウント3-2でピッチャーは変化球を投げろ

続いてのシーンは野球の中でも迷うことの多い、フルカウントのシーンで分析してみます。



再びバッターとピッチャーでゲーム理論を適用してみます。

|ピッチャーの選択肢

カウントが3-2の場合、ピッチャーは主に2つの選択肢に直面すると考えられます。

【選択肢1】:フォアボールを避けるためにストライクゾーンに入るような速球を投げる。
【選択肢2】:もう少し危険を冒して、ボールになるかもしれない緩い変化球を投げます。

|バッターの選択肢

これに対応して、バッターにも主に2つの選択肢があります。

【選択肢1】:速球を予測する
【選択肢2】:ボールになるかもしれない緩い変化球を予測する

|ゲーム理論による分析

ではこれらの条件をもとに、ゲーム理論からはじき出された最も合理的な行動を見てみましょう。

分析したマトリクスは以下の通りです。


左上と右下のマスの通り、バッターが速球、または緩い変化球の予測が当たれば、ヒットやフォアボールなど大きな効果が得られます。
ただ、緩い変化球の場合は曲がるコースやタイミングがボールによってことなるため、速球程の効果はありません。

いっぽうピッチャーは、右上と左下のマスの通り、バッターの予測を外せばストライクや凡打など高い効果を得ることが予測されます。

|ゲーム理論での答え

ではこれらの条件をもとに、ゲーム理論からはじき出された最も合理的な行動を見てみましょう。

3-0のパターンと同じく混合戦略のナッシュ均衡で、合理的な選択とその確率を出していきます。





カウント3-2(フルカウント)における解

バッターは、50%の確率で速球を予想し、50%の確率で緩い変化球を予想する必要がある

ピッチャーは33%の確率で速球を投げ、67%の確率で緩い変化球を投げる必要がある


と分析されています。


ピッチャーは導き出された答えの通り、ゲーム理論の分析マトリックスから、フルカウントでは緩い変化球を投げる方が安全であることが分かりますね。

バッターにとっては少し複雑で、速球を予測すると大きな効果または中程度のリスクにつながります。

緩い変化球を予測すると、大きな損失または適度な効果が発生しているため、数学的にはどちらがいいかは出てないという結論になっています。

バッターのみなさんすみません。。ここが野球の難しいところですね。

フルカウントの場面では、打者は相手投手の状態や過去のデータからマトリクスの効果とリスクを臨機応変に変えて判断していく必要があるようです。

まとめ

今回は、一般的にさまざまな分野に応用されている「ゲーム理論」を使って、野球で最も緊迫する場面、”フルカウント”や”3-0”の状況での合理的な行動を分析しました。

数学的にはある程度の結論はでましたが、それ以外の要素(試合の状況、ゲームの流れ、相性)などもあるので、これらの数学的結論を参考に自分なりに分析して行動していく必要がありそうです。


今後も日本国内だけでなく、海外での分析結果や他分野での理論も野球と組み合わせて紹介させていただきたいと思います!

皆様の野球人生のヒントに少しでもなれれば幸いです。


読んでいただき、ありがとうございました。

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