・どんなバットを選べば良いスイングができるか、物理学の研究から紐解いてみた。
・”ヘッドスピードが最も速くなるスイング”を良いスイングとすると、重心がグリップ寄りのバットを選ぶことが良いと研究結果が示している。
はじめに(バット選びの基準って?)
神戸大学の研究(調査結果)
研究内容としては、野球の打撃について物理学の観点から、バットの質量と重心位置を主な要素として打撃実験を行い、どのバットがもっとも理想的なスイングが可能かを計測しました。
ここでいう理想的なスイングとはヘッドスピードが最速になるスイングとしています。
具体的な実験方法としては、前方から飛んできたボール(スポンジ製)に対して、バットのヘッド速度やバットのスイング自体の速度を計測し、
バットの質量と重心位置がいかにに影響を及ぼしているかを3種類の質量(869.2-912.4kg)と3種類の重心位置(ヘッドから30.1-32.8cm)の計9パターンのバットにて打撃試験をしました。
(被験者が先入観を持たないよう、バットは見た目で判断できないようにしている)
分析は硬式野球部選手12名が打撃を実施し、2台のカメラを使用した3次元動作解析システムにて分析・検討しました。
実験にてバットがボールに衝突した瞬間と打撃プロセス全体の運動学的データを計算した結果、以下の結論が導き出されました。
1)重心がグリップの近くにあるバットを振ったときの方が、重心がグリップから離れた場所にある別の野球のバットを振ったときよりも、バットヘッドの速度が大きかった。
2)すべての野球選手にとって、バットの質量はインパクト時のバットヘッドの速度に影響を与えませんでした。
3)インパクト時のヘッド速度は、グリップ周りの慣性モーメント※が大きいバットを用いた時より、グリップ周りの感性モーメントが小さいバットを用いた時の方が速くなった。
※慣性モーメント:物体の回転のしにくさ。ここでは、バットを振り出す際の力と理解してください。(バットの質量とや重心、半径等で算出できる値で、回転の中心と重心が遠いほど慣性モーメントが大きくなります)
4)バットのスイングスピードが遅い打者の場合、バットの質量が小さいほうがバットヘッドの速度が速くなることがわかり、スイングタイプが異なると影響される特性も異なることがあることが示されました。
以上の結果をまとめると、
・バットの重さはあまり関係なく、重心がグリップの近くにあるバットの方がバットヘッドの速度は速くなる
・グリップ周りの慣性モーメントが小さいバットの方がバットヘッドの速度は速くなる
・スイングスピードが遅い打者は軽いバットの方がバットヘッドの速度は速くなる
バットの重さではなく、重心が重要ということですね。
小柄でパワーのない打者は重いバットを振れ」という指導者もいますが、これは物理学的には逆効果のようですね。(スイングスピードがより遅くなる)
※研究論文「野球におけるバットの質量・重心位置が打撃に及ぼす影響」(2009年 神戸大学)より
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