【メジャー理論】野球の心理学!いいイメージは伝染する?


この記事のまとめ

・認知科学の観点から「前の打者がアウトでなくヒットを打った場合、次の打者はヒットを打つ確率が高くなる」とアメリカの研究結果が示している。

・この現象はより経験豊富な野球選手に現れやすい。


 

「打撃は伝染する」

野球の面白い理論の一つに「打撃は伝染する」というものがある。

複数人のバッターがヒットを打つとその後に続く打者もヒットを打つという理論である。

実際 MLBのデータにおいても前の打者二人がアウトになったときと比べ、前の打者二人がヒットを打った場合、続く打者のヒットの確率は約50~70%高くなるというデータもある。


それでは、関連するいくつかの研究を見ながらその理論を説明していこう。

脳内のミラーニューロンが活性化する

これまで野球評論家はこれについて、投手の打たれ弱さや試合の流れなどで説明していたが最近の認知科学の研究で、科学的には”ミラーニューロン”として知られる脳内のユニークな学習システムが影響していると分析されている。


具体的には、若い選手が初めてバットを持つ時、彼らは脳内で”マネ”することでスイングを自然に学ぶと分析結果が示しているという。 

つまり、他のプレイヤーのスイングを見ることや、コーチが指導する言葉が彼らの脳内で上手く組み合わせされて学習し、脳の働きのみで彼らのプレーのパフォーマンスが向上するということである。


|イタリアの猿による実験

このミラーニューロンを発見した起源は以下の研究である。

1990年初めイタリアの研究者たちはアカゲザルの脳活動を測定している時に興味深いことを発見した。

まず猿が餌を求めて手を伸ばすと、脳内の特定のニューロンが電気的活動を示した。
また面白いことに、人間がサルの前で食べ物を拾った時にも猿の脳の同じニューロンが電気的活動を示した

これはミラーニューロンと呼ばれ、脳が他人の行動に反応しているように、特にスポーツで我々の 運動能力向上にも関係していると示されている。



|イギリスの人による実験

またバンガー大学の認知科学教授であるエミリークロスは、私たちが複雑な動きを学ぶ方法について面白い実験を実施した。

彼女は何かを学ぶために練習をする必要があるのか、それとも他の人がそれを実行しているのを観察するだけで十分かどうかを実験を実施した。

彼女はダンスダンスレボリューションのようなゲームで新しいダンスステップを学ぶことを題材に実験を実施した。
 このゲームでは、コンピューターの画面にダンスの動きが表示され、ゲームに接続されている床のプラスチックマット上でそれらをマネしてダンスするものである。


彼女は3つのグループでダンスを教えた。

・最初のグループは、新しいステップを見せて実際に練習できるグループである。

・2番目のグループは、新しいステップを見ることが許可されただけで、物理的に練習することはできないグループである。

・3番目のグループは、まったくステップも見れずトレーニングもできないグループである


被験者は後に、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使用して脳をスキャンされ、各グループを観察した。

予測どおり、1番目と2番目(実際に練習したグループ。ステップを見るだけのグループ)が脳の行動観察ネットワーク(AON)で共通の活動を示していることを発見した。

特に神経領域で脳の下頭頂小葉と運動前野に見られる運動技能や記憶機能を担当している部分で共通の活動を示していたという。

簡単に説明すると、彼らが新しいステップを物理的に練習したか、単に新しいステップを見たかにかかわらず、脳の同じ領域が活性化され、新しいステップのパフォーマンスは非常に似ていたと示されたのである。

実験を主導したエミリークロスは
「以前の研究では、能動的学習と受動的学習の間に行動パフォーマンスの相関関係があることが確立されましたが、この研究では、研究参加者が能動的または受動的に体験したダンスを観察したとき、脳の活性化の顕著に類似性が発見された」とコメントしている。

|野球における実験

では実際に野球においてはどうなのか?

チームメイトが出塁した後、打撃のパフォーマンスが向上した場合、その人の打席ではミラーニューロンがアクティブになっていたのか明らかにするためにある実験が実施された。

バーミンガム大学のロブ・グレーとシカゴ大学のサイアン・ベールロックは、それぞれの専攻しているスポーツ科学と心理学の専門知識を組み合わせその影響を調査した。

彼らはいくつかの課題について検証した。

・前の打者のヒットを見ることで、次の打者はヒットを打つ確率が増加するのか?
・前の打者の打撃を見てから実際にバッターボックスに入るまで、時間が長くなるほどその効果は減少するのか ?

彼らは24人の大学生の野球選手を集めて実験した。

そのうちの12人は大学のクラブチームでプレーし10年以上の野球経験がある選手(経験豊富)。あとの12人はわずか6年ほどの野球経験を持つ選手(浅い経験)たちである。

まずは各選手が一人ずつ打撃を行い、それぞれの打撃パフォーマンスの基準値を設定した。


翌日は他の打者が打撃したものを見てから打撃をする実験を行い、前日の基準値から打撃が向上したか計測した。



結果は予想通り、ヒットを打った打撃を見てから打った選手はよりいい当たりを打った。

そしてヒットを打った打撃を見てからの時間が長くになるにつれて効果は減少した。

そしてその中でも10年以上の野球経験のある(経験豊富な)プレイヤーは他の選手よりもパフォーマンスが向上した。

面白いことに、なぜ野球経験違いでパフォーマンスの向上度合が異なるのか?

それは、練習量の違いにより経験豊富な場所は経験の浅い出すよりもより発達した知的運動能力を持っているからだとロブ・グレーとサイアン・ベールロック結論づけている。

まとめ

以上のさまざまな研究から、認知科学的に相手ピッチャーの映像などを見てシュミレーションしたり他の選手がヒット打っている映像を見ると、選手のミラーニューロンがアクティブになりパフォーマンスが向上することが判明している。

これらの研究結果は全国の野球指導者や選手たちにとって、少しでも打撃パフォーマンス向上のヒントになれば幸いである。

今回は「認知科学×野球」で打撃能力が向上するような理論を紹介したが、今後もこのように多方面からの面白い研究結果があれば紹介させていただきたい。

読んでいただき、ありがとうございました。

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