小笠原道大 ~高校時代ホームラン0本からの覚醒~

”ガッツ”の愛称で親しまれていた小笠原道大。 
今回はこの打者について打撃理論を紹介する。

 |特徴と成績

    -体格・生年月日
        -身長/体重:178cm/84kg
        -生年月日:1973年10月25日
        -投打:右投左打 -ポジション:内野(主にサード、入団時は捕手)

    -特徴
        -高校野球ではホームラン0本であったが、社会人野球で頭角を現し、日本ハムファイターズに捕手として入団。

        -2,3年で活躍しなかったら辞めようという意気込みで人より多くの時間を練習に充てる努力をし、確実性のある打球と長打力を身に着け、日本ハムファイターズ時代は恐怖の2番打者として恐れられていた。

        -プロ野球の現役生活を通して、3割30本を9回達成し、王貞治に次ぐ歴代2位の記録を保有している。

        -構えた際にバットを一直線に前に出す神主打法のバッティングホームと寡黙な性格、その風貌からサムライとの愛称で呼ばれることもあった。


    -主なタイトル・記録
        -首位打者 (2002年・2003年)
        -本塁打王 (2006年)
        -打点王 (2006年)
        -最高出塁率 (2003年)
        -最多安打 (2000年、2001年)
        -最優秀選手 (2006年・2007年)
         ※両リーグでのMVP獲得は江夏豊以来2人目、リーグを跨いでの2年連続は史上初。
        -ベストナイン (一塁手部門:1999年・2001年・2006年 三塁手部門:2003年・2004年・2007年・2009年)
        -ゴールデングラブ賞 (一塁手部門:1999年 - 2002年・2006年 三塁手部門:2003年)

     -通算成績 (打撃)
年度 所属球団 試合 打席 打数 得点 安打 二塁打 三塁打 本塁打 塁打 打点 盗塁 盗塁刺 犠打 犠飛 四球 死球 三振 併殺打 打率 長打率 出塁率
1997 日本ハム 44 98 94 7 21 10 2 0 35 7 1 0 0 1 3 0 10 2 .223 .372 .245
1998 日本ハム 71 98 86 7 26 5 0 1 34 9 1 1 0 1 11 0 17 3 .302 .395 .378
1999 日本ハム 135 608 547 90 156 34 4 25 273 83 3 4 0 4 56 0 84 6 .285 .499 .349
2000 日本ハム 135 635 554 126 182 23 4 31 306 102 24 6 0 5 74 2 91 6 .329 .552 .406
2001 日本ハム 140 643 576 108 195 40 2 32 335 86 1 6 0 0 63 4 102 8 .339 .582 .407
2002 日本ハム 135 574 486 77 165 27 2 32 292 81 8 1 0 6 76 6 77 6 .340 .601 .430
2003 日本ハム 128 546 445 83 160 34 1 31 289 100 8 3 0 3 93 5 65 13 .360 .649 .473
2004 北海道日本ハム 101 452 377 78 130 19 2 18 207 70 3 1 0 2 70 3 70 10 .345 .549 .449
2005 北海道日本ハム 133 580 514 91 145 27 2 37 287 92 2 1 0 1 61 4 114 8 .282 .558 .362
2006 北海道日本ハム 135 579 496 77 155 31 1 32 284 100 4 3 0 8 73 2 85 8 .313 .573 .397
2007 読 売 142 617 566 95 177 33 1 31 305 88 4 0 0 4 43 4 98 10 .313 .539 .363
2008 読 売 144 589 520 93 161 27 1 36 298 96 0 2 1 5 56 7 105 14 .310 .573 .381
2009 読 売 139 580 514 78 159 25 1 31 279 107 2 1 0 2 60 4 107 8 .309 .543 .384
2010 読 売 137 591 510 83 157 24 1 34 285 90 1 0 0 5 73 3 101 9 .308 .559 .394
2011 読 売 83 314 281 21 68 12 0 5 95 20 1 3 0 2 27 4 66 4 .242 .338 .315
2012 読 売 34 99 92 4 14 3 0 0 17 4 0 0 1 1 5 0 22 1 .152 .185 .194
2013 読 売 22 40 36 2 9 2 0 1 14 8 0 1 0 1 2 1 7 2 .250 .389 .300
2014 中 日 81 99 83 4 25 6 0 1 34 18 0 0 0 1 14 1 16 1 .301 .410 .404
2015 中 日 53 59 51 2 15 3 0 0 18 8 0 0 0 1 7 0 10 1 .294 .353 .373
通 算 1992 7801 6828 1126 2120 385 24 378 3687 1169 63 33 2 53 867 50 1247 120 .310 .540 .389
(「一般社団法人日本野球機構公式HP」より引用)


|打撃理論

    -しっかりバットを振る。
 フルスイングが小笠原選手の代名詞であるが、以外にも本人はフルスイングという意識ではない。つまり、軸がブレずに自分の正しい打撃フォームで全力で振り、しっかり振り切るということを意識している。
    小笠原選手いわく「フルスイングという意識ではなく、しっかりバットを振ることを意識している。」とのこと。

    -インパクト時はボールを押すイメージ。
    ボールを捉えるインパクトまでは左ひじをたたみ、インパクトしてからはひじをしっかり伸ばして振り切る。
    小笠原選手は左手一本でバットを振る練習を繰り返し、左腕でコンパクトにミートしてから押し込むイメージを確認している
    (これにより逆方向にも強い打球を打つことができる)
 ※ボールを押し込む重要性は髙橋由伸選手も同様の理論を持つ。


|独自の練習

    -人一倍工夫し、納得するまで練習を終わらない。
 小笠原選手いわく「今までやっていないことはできない。今までやってきたことやる。」と話しており、時間をかけても丁寧に自分が納得いくまで練習する。

    -必ず素手で打撃練習。
    ボールを捉える感触を感じ、手に覚えさせるため、練習では手袋をつけず打撃を行う。
    これを小笠原選手は”手のひらをつくる”と表現している。特にシーズン開始前の春先のキャンプで実施している練習法である。

 -頭をできるだけ動かさず、逆方向へ打つ練習を実施する。
   ボールを正確に、少しでも長く見るために小笠原選手は打撃練習で逆方向に打つ練習も実施している。

    -左手一本でバットを振る練習。
 逆方向に強い打球を飛ばすために重要な左手(左打者の場合)の動きを確かめている。
 ボールを捉えるインパクトまでは左ひじをたたみ、インパクトしてからはひじをしっかり伸ばして振り切る。これを繰り返すことで左腕でボールを強く押し込むことができる。



|スイング参考動画

|所感

    -小笠原選手は豪快なフルスイングが印象深いが、実はコンパクトにバットをスイングしている。構えてからトップの位置まで左脇をしっかり閉め、スイング時は足と腰を使ってそのまま回転しているシンプルなフォームである。

 -スイングを見ても終始両脇は閉めた状態でしっかり体の力を逃がさず、体全体でボールを押し込んでいるように感じた。

    -スイング中に崩れない軸、変化球が来ても足で粘ってボールを拾う打ち方、すべては数えきれない猛練習の賜物であると感じた。

読んでいただき、ありがとうございました。

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